今夜再びオレンジのカバンの女を見た
今度は私の家から200メートルほど離れたところにある坂道にぼんやりと立っていた
その姿を確認すると同時に私は身を隠したが、彼女が私の姿に気づいたかどうかはやはり判然としない。
その坂道の近くにはある高校がある。もしかするとそこの生徒かもしれないという考えも頭をよぎったが、私の目にした限り彼女は常に私服であったし、その顔をしげしげと注視できたことはないので年齢もわからぬため結局それは単なる憶測の域を出ない。
ただ、今日に関して言えば場所が以前よりも私の家から離れていたため私の心には若干の余裕があった。
結果として私はその後いずこかへと歩き去る彼女のあとを付けたのである。そのオレンジのカバンの女はそのまま坂道を登りきると、私がこれまで訪れたこともない住宅街をふらふらと移動していった。
そのまま足跡を立てぬよう、15メートルほどの間隙を空けながら300メートルも歩いていくと少し大きな公園があり、彼女はその中へと入っていった。
公園となると開けており、闇の中とはいえ私が身を隠すのは難しくなる。私は少しためらった後、今日はこれ以上追わないことに決めて引き返した。
きびすを返し歩き出した際、なにやら背中に何者かの視線が当てられているような気がしてしかたなく、幾度か振り返ったがそこには誰もいはしなかった。