第5の話

机の上に写真を並べている光景
次女「写真ある?」
長女「あるよ」
次女「ちゃんと撮っておいてくれないと」
次女「もっと撮ろうよ」
三女「別にいいんじゃない?」
次女「え」
少し無言
次女の友人の女の子が来る
次女の友人「今日○○さぼったでしょ」
次女「え」
長女「そんなことしたの?」
次女の友人「この子は××(30?)番だから」
次女の友人「だから今日やるはずだったでしょ」
長女「私も近いわ」
三女「私は???番」
他の三人「え」
三姉妹はテレビを見ている

テレビには海と島が映っている
三女「流れがいい」
次女「え」
三女「水もいい」
次女「水」
次女「水を買おうか」
三女はテレビを見ている
三女「懐かしいね」


夏の夕方、姉妹の家の中。窓は開けてある。
 三女は浮かない顔をしている
三女「泳ぐことができないの」
次女「そんな必要はないでしょ。小学生なんだから」
三女「いや、これは沽券にかかわる問題だから」
次女「プールに行こうか」
三女「ううん」
三女「プールに行くときは知り合いを誘いたいから」
次女「では、お参りに行きましょう」
三女「お参りに」
傘をかぶった妖怪が木の陰から現れる

妖怪の体は子供くらいの大きさ、黒っぽい紫で一つ目
足は無く体が宙に浮いている
日が沈みかけている
次女は小さく叫び、三女はおびえて涙をこぼす
傘のようかいはぬらぬら近づいてくる
長女は分かっている顔で、白い紙を出す
紙はひらひら揺れる
その後、傘の妖怪が現れた木立の向こうから、赤い虫がやってくる。虫は傘の妖怪より若干大きく、とげのついた硬い殻に、鋏のような尻尾を持っている
傘の妖怪は怒った様子で持っていた木の棒を使い虫を殴る
虫はひしゃげる
三女はさらに泣く
虫はどんどんひしゃげていく
虫の尾の鋏の片側の刃が折れて転がる
虫は死んでしまったように見える
しかし折れた刃のかけらだけは動き出し、宙に浮く
傘の妖怪が三つに切断されて転がる
黒い液体を流す単眼は何かを見ているようだが死んだのかもしれない
ひしゃげた虫はどこかへいってしまう
次女「ねえ・・・」
三女「何?」
次女「死なせてしまったね」
三女「うん」
長女「お墓を立てなくてはいけないわね」
次女「え?」
長女「このようなものでも」
長女「ほんとうにこんなことしたから」
 長女は少し涙をこぼす

nagのメール

山のちょうじょうにのぼっていきました。なにがあったのでしょうか


うっすら思い出しかけているが確かそういう話もあった
姉妹が山に登っていくのである
全面を灰色の霧に覆われて、雪も降らぬのに吹雪にあっているかのごとき情景であった
姉妹は無表情で黙々と登っていった
頂上に何があったか?
黒い柱のような物語っていた。頂上を示す標なのだろうが何やら十字架のようにも見えた



かなしいしまいはすくわれたのだと

確かにあまり幸せそうにはみえない。だが何が悲しくて何が救われたのかなど私の知るところではない


イモウト二人が泣くことおおいどこでしょう

私の知るところではない。次女と三女は暗い自宅の部屋で陰気な顔をしていることはあった。次女は洞窟のような穴の中で泣いていたこともあった

またカウンセラーもどきのところに行ってきた
最近は向こうと何やら波長が合ってきたというか、彼女がどういう意図で術を施しているのか読めてきたものだから効率がいい
白い布をひらひらさせたあと黒い袖で目を覆われるという施術を受けているが、かなり高い水準で記憶の海深くにダイブすることができる

昔、郷里で近くに住んでいた男がこちらへやってきていたので日、月曜日を通じて相手をした
私の家にも何度か着ていた男だ
ためしに例の小さな女の子のことを聞いてみたが知らないという
無論知っている可能性のほうが低い
あくまで試しに聞いたのである
ただ一つ気になることを聞いた
私と彼の同年代であったべつの知り合いの男が蒸発しているらしい
それなりに浅からぬ交流を持っていた男だけに驚くとともに
月日の流れのもたらす無常というものにむなしさを覚えた

今夜再びオレンジのカバンの女を見た
今度は私の家から200メートルほど離れたところにある坂道にぼんやりと立っていた
その姿を確認すると同時に私は身を隠したが、彼女が私の姿に気づいたかどうかはやはり判然としない。
その坂道の近くにはある高校がある。もしかするとそこの生徒かもしれないという考えも頭をよぎったが、私の目にした限り彼女は常に私服であったし、その顔をしげしげと注視できたことはないので年齢もわからぬため結局それは単なる憶測の域を出ない。
ただ、今日に関して言えば場所が以前よりも私の家から離れていたため私の心には若干の余裕があった。
結果として私はその後いずこかへと歩き去る彼女のあとを付けたのである。そのオレンジのカバンの女はそのまま坂道を登りきると、私がこれまで訪れたこともない住宅街をふらふらと移動していった。
そのまま足跡を立てぬよう、15メートルほどの間隙を空けながら300メートルも歩いていくと少し大きな公園があり、彼女はその中へと入っていった。
公園となると開けており、闇の中とはいえ私が身を隠すのは難しくなる。私は少しためらった後、今日はこれ以上追わないことに決めて引き返した。
きびすを返し歩き出した際、なにやら背中に何者かの視線が当てられているような気がしてしかたなく、幾度か振り返ったがそこには誰もいはしなかった。

第四の話の前にも三女はおじさんとあっていたはずである
その時次女も顔を合わせていたものと記憶している
しかしながら長女はいない
おじさんは確かに三女を抱き上げたのである
「高い高い」
のようなことを言っていた
しかしながら三女はこれに対し大変な抵抗を示して暴れたので
次女が「やめてよ」
と割って入ったのである
光が差していた
三女を抱き上げるおじさんの足元には円状の光がさしていた
しかしながらそれもおじさんが顔を暗くして三女を地に下ろしたとき消えてなくなったのである